同じ問題集でも取り組み方でかわる 失敗例と成功例

行政書士試験

失敗した取り組み と 成功した取り組み その違い

私は定年退職後、受験生として行政書士試験合格に向けて勉強を続けてきました。1年目も2年目も中心にしてきたのは『合格革命 行政書士 肢別過去問集』(早稲田経営出版・TAC出版)です。

勉強の仕方も同じです。1日の学習量を決め、法律ごとにページ数を割り当ててひたすら問題を解く。可能な限り速度をあげて解き進める。1週間1回転をめざして解き進める。それだけ。

非常に単純な方法です。でも効果があることは間違いありません。

失敗した年にやったこと

定年退職受験生1年目。上に書いた単純な方法で、毎日毎日勉強を継続しました。来る日も来る日も『肢別過去問集』を開き、その日のノルマをこなしていきました。次第に問題を解くペースも速くなってきました。わからない事項を参考書やネットで調べました。解答に納得できるようにもなってきました。『肢別過去問集』の解説に書かれている内容も、理解できるようになってきました。

行政書士試験は例年11月第2日曜日が試験日です。私もこの日に焦点を当てて『肢別過去問集』を繰り返していました。あるときまでは………。

試験日が近くなってくると模擬問題集に取り組んだり、記述問題に取り組んだりします。私の場合にも10月頃から模擬問題集を始めました。最初の頃は、私の力では当然、180点には届きませんでした。何種類か問題集をこなしていくうちに、180点を超えることもでてきました。2回目・3回目と繰り返し模擬問題集に取り組んでいると、合格点である180点をクリアできるようになってきました。手応えを感じるようになってきました。

実はこれが敗因です。模擬問題集に取り組むうちに『肢別過去問集』への取り組みが疎かになっていたのです。1週間に1回転する、という当初のペースが落ちていたのです。『肢別過去問集』を何日も開かないことさえ出てきました。模擬問題集にかける時間が多くなっていたためです。

勉強をしなかったわけではありません。勉強はずっと継続していました。勉強時間も減っていたわけではありません。毎日、真面目に勉強を継続していたのです。『肢別過去問集』にかける時間が減っていただけです。

しかし、それが一番やってはいけないことだったのです。自分は記憶力が落ちている定年退職受験生だということを忘れていたのです。

『肢別過去問集』は高速で回転させることに意味があります。高速に回転させることで、知識の抜け落ちを最小限に食い止めるのです。知識が抜けないようにするには、短い時間で回転させることが重要なのです。

ところが試験が近くなった時期に『肢別過去問集』の回転数が落ちてしまったのです。『肢別過去問集』を回転させるスピードが落ちてしまったのです。

結果、何がおきたかといいますと、知識が抜け落ちたのです。試験直前になって、知識の抜け落ちるスピードの方が、覚えるスピードに勝ってしまったのです。他のことに時間をとられている間に、それまで蓄えてきた『肢別過去問集』の知識を忘れていったのです。

そして不幸なことに、知識が抜けていっていることに自分が気づいていなかったのです。気づけば元に戻ることもできたと思います。それに気づかずに1か月を過ごしていました。

気づいたのは、行政書士試験直前のことです。『肢別過去問集』を解いているうちに、以前に比べ間違う問題が多くなっていることに気づきました。「あれっ、だいぶ忘れちゃってるな」そう感じたのです。

時すでに遅し。後の祭りです。1年目の試験は、なんと150点台に終わりました。勉強しなくてもとれる程度の点数です。試験が終わり、自己採点したときに愕然としました。到底、合格には届かない点数です。でも、これがその時の自分の力だったのです。

「あんなに時間をかけてやってきたのに」「一生懸命、勉強したはずなのに」悔しくてたまりませんでした。泣けてきました。一生懸命に取り組んだからこそ、そう思ったのです。

成功した年にやったこと

2年目に入りました。試験結果の発表まで待っている必要はありません。到底、合格に届いていないからです。であれば、一刻も早く次の試験に向けて始動しなければなりません。十分時間をかけて、こんどこそ納得のいく結果を残さなければなりません。

実は2年目は通信講座を申し込みました。送付されたテキストをもとに、オンライン講義を受講しました。受講した講義をもとに問題集に取り組みます。テキストは憲法1冊、民法2冊、行政法2冊、商法・会社法・基礎法学1冊、一般知識1冊と非常に充実した内容でした。

通信講座を申し込み、11月20日には2年目の学習を開始しました。

テキストを開きながら、オンライン講義を受講します。重要な事柄にはアンダーラインを引き、必要な事柄はメモを書き足しました。テキストへの書き込みも、それなりに増えてきました。テキストを見ると勉強している感が伝わってきます。

しかし実際に体験してみるとわかると思いますが、講義を受講するのは多くの時間を必要とします。オンライン講義の場合、通常1回の受講で終わるということはないと思います。同じ講義を何回か受講すると思います。このことはオンライン講義の強みでもあります。しかし、それもまた時間がかかります。

通信講座で送付された問題集は法律の分野ごとの過去問でした。本試験と同じように5肢の中から×肢や○肢を選ぶ問題です。憲法1冊、民法1冊、行政法3冊、商法・会社法・基礎法学1冊、一般知識2冊の問題集がありました。山積みにすると結構な分量となります。試しにテキストと問題集を積み上げてみますと高さが23cmほどありました。講義をもとにしてこれらの問題集に取り組みました。5回程度各冊の問題に取り組んだところで、気づきました。

「答えを覚えてしまっている!」なぜこの答えになるのかがわかってきたのではありません。選択肢の何番目が正解かがわかってしまうのです。選択肢の組み合わせをもとにして、消去法や類推により正解を導けるようになっていたのです。でも、これは問題を解いているのとは違います。問題を解く力がついているわけではありません。答えを覚えているだけなのです。

「このペースでは無理! 合格できない。」「私のように知識の抜け落ちるスピードが速い人間は、こんなゆっくりしたペースで学習していたのでは、去年の二の舞になってしまう」「五肢択一の問題で練習していたのでは選択肢ごとの正誤を判断することができない」

そう気がつきましたが、時はすでに5月。

もちろん1年目と同様に肢別過去問集の回転もしていましたが、1週間で1回転には至っていませでした。一念発起。『肢別過去問集』中心の勉強に切り替えました。通信講座のオンライン学習、テキスト、問題集は、それ以後、ほとんど開くことはありませんでした。通信講座が悪いわけではありません。内容が不十分だったわけでもありません。私にあわなかっただけです。

危うく、また失敗を繰り返すところでした。時は5月。これから本腰を入れて合格できるかどうかはわかりません。でも、やるしかありません。

再び、『肢別過去問集』中心の学習に切り替えました。『肢別過去問集』を1週間で1回転させる学習です。あせりもありました。それだけに必死になって取り組みました。昨年勉強していたときの知識は、それほど残っているわけではありません。なにしろ定年退職受験生です。一度頭に入れた知識も、繰り返していなければ、どんどん忘れ去っていきます。現在、残っている知識をもとに、高速回転を繰り返していくことで再び知識量を増大していくしかありません。昨年の努力は、ほぼ無に帰していました。昨年の二の舞にならないためには、戦略が必要です。肢別過去問集を中心にして、それに加えて『千問ノック』『記述試験対策問題集』『模擬試験集』を追加して取り組むことにしました。

肢別過去問集がある程度軌道に乗ったら、『千問ノック』を加えます。こちらも『肢別過去問集』と同様に1週間1回転の高速回転をめざします。

「模擬試験集」は市販の5社(早稲田経営出版、TAC出版、LEC、成美堂、伊藤塾)のものを使いました。昨年と異なり気をつけたことがあります。それは模擬試験で知らないこと・わからないことが出題されていても、その内容を深追いしないことです。知らないこと・わからないことを調べ始めるととても時間がかかります。模擬試験の解説に書かれてことで理解できる範囲に収めることにとどめました。

模擬問題集はあくまでも模擬問題です。実際の行政書士試験のように試験委員の方が、じっくり時間をかけて作成した問題とは異なります。模擬問題集の問題は、多くは資格予備校の先生方が作成したものだと思います。そして行政書士試験の試験委員の方々も、市販の問題集に収録されている問題には、多分、目を通しているでしょう。となれば、市販の問題集に収録されている問題から、本試験の出題はほぼないだろう、と考えました。仮にあるとしても、出題される問題は、これまでも重要な論点であり、過去問でも触れられている問題に違いない、と考えました。正しいか考えかどうかはわかりません。しかし、ある市販の模擬問題集に収録されている問題と同様の問題が出題されたとしたら、かなり問題になってしまうのではないでしょうか。あちらこちらでたたかれそうです。それが過去に出題されていない新たな視点の問題だとしたらなおさらでしょう。そう考えると『肢別過去問集』にも『千問ノック』にも収録されていない問題、模擬問題集だけに収録されている問題は、重要視しなくても良いはずです。そこに時間をかけるよりは、高速回転に時間をかけるべきです。1年目の大きな失敗はそこにありました。模擬問題集は、あくまでも本番の試験になれるためのものなのです。

その代わり本番の試験時間と同じ時間に開始することにしました。昼食はどの程度とれば良いのか、あるいはとらない方が良いのか。何時間前に喫食しておくのが良いのか。そうした判断をするために使うことにしました。とはいっても合格点に達しているかどうかは、気になります。丸付けや採点は行っていました。合格点に達していないからといって気落ちせず、そして合格点に達したからといって浮かれすぎず、取り組むように気をつけました。